すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
一度目の召喚で私の身の回りの世話をしてくれた、ブルーノさんとアメリさんだ。二人は遠慮がちに私を見つめ、目が合うとそっとうつむいた。
(どうしたんだろう? でもせっかく声が出せるんだから、二人に挨拶だけでもしたい!)
私が小走りにブルーノさんたちに近づくと、二人は驚いた様子で顔をあげた。
「お久しぶりです! ブルーノさん、アメリさん。私一年前は、二人とすごく仲が良かったんです。良かったらこれからも仲良くしてもらえますか?」
すると二人は顔を見合わせ、手を握り合って震えている。そして、みるみるうちにアメリさんの瞳から大粒の涙があふれ出した。
「うわ〜ん! サクラ様! ごめんなさい!」
「ア、アメリさん?」
「申し訳ございません! 私たちが聖女様のことを忘れてしまうなんて……本当に申し訳ございません!」
「ええ? ブルーノさんまで! そんな二人が謝ることじゃないですよ!」
暗かったのはこれが原因か。たしかに聖教会は私をとても大切にしてくれていた。いつだったか「聖教会は聖女様を守るためにあるんですよ」と、私に仕えることを誇らしく語ってくれたこともあった。
「ジャレドから一緒に過ごした日々のことを聞いてな、それで二人は落ち込んでいるんだ。もちろんここに居るものは皆、サクラに対して申し訳なく思っている」
「ご、ごめんなさい。この国の恩人であるサクラ様を忘れているなんて……ひっく……」
司教様が落ち着かせるように、二人の肩を抱いている。私もアメリさんの泣きじゃくる姿に、思わず駆け寄り手を握った。