すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜

 救いはアルフレッド殿下が真面目で優秀だったこと。またその殿下を陛下が冷遇しなかったことで、水面下では陛下の退位とアルフレッド様が即位する準備が進められている。きっと王女はそういったことも知らないのだろう。


 殿下が睨みつけても、陛下に強請れば願いが叶うと思っているようだ。


「サエラなんかとはなんだ! そのような見下した態度で隣国に嫁いだら大変なことになる。夫や国民に大事にされなくてもいいのか?」
「かまいませんわ! わたくしはカイルと結婚するのですから! そうでしょう? お父様!」


 話を向けられた陛下はお付きの者に支えられながら紅茶で喉を潤していた。最近は表に出ることもなくなり、もっぱらアルフレッド殿下が国王の役割を担っている。


(陛下はアンジェラ様には甘いが、アルフレッド殿下のことも認めていらっしゃる。それならばきっと……)


 陛下は数回咳き込むとアンジェラ王女を申し訳無さそうな顔で見つめ、ようやく口を開いた。


「いや……しかしだな。アンジェラから聞いていた話ではカイルと想い合っているというから、王命で婚約させたのだ。しかしカイルが聖女である女性を愛しているのなら話は別だ。聖女は私と同じ地位にあたる稀有な存在。それに以前からカイルの父親であるラドニー侯爵からも、婚約を考え直してほしいと言われていた」

「ま、まさかお父様……!」

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