すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


 何かがおかしい。それによく周囲を見てみると、見知った顔が何人かいた。名前までは覚えていないけど、たしかアルフレッド王子の側近だったはず……。


(一人で歩いている時に挨拶してくれた人もいるから、絶対に私の顔がわかると思うのになんで?)


 彼らはカイルと同じように、突然現れた私を睨んでいる。私が聖女だと気づき、助けてくれる人はやっぱり出てこなかった。


「おい! キョロキョロするな! 誰か仲間がいるのか? 答えろ!」


 何も話さず挙動不審な私に苛ついたのか、カイルはいっそう乱暴な口調で問いただす。押し当てられている剣の刃も、力が込もっているのかカタカタと震えていた。


 それでも話そうとすると喉が焼けるように痛くなるから、話すことができない。そのうえ私が聖女だと証明してくれる人もいないのだ。


(どうしよう! どうすれば、私が聖女だってわかってもらえるの?)


 私を刺し貫くのではないかと思うくらい睨みつけるカイルの姿に、ここには私を助けてくれる人がいないのだと感じ始めた時。私を囲む人だかりの奥から、一人の女性の声が聞こえてきた。


「カイル、その者は危険だわ。わたくしには、わかるの。だってこの部屋に突然現れたのよ? みなさんも見ていたでしょう?」


 私を囲む人だかりの奥から、一人の女性の声がした。この声は聞いたことがある。たしか、この人は……。

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