すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「ジャレド! いい加減にしてくれ! からかっているのか? ケリーは俺の仲間だ。裏切ることなんてない! だいたい王女側についてなんの得があるんだ!」


 カイルがケリーさんと師匠の間に割って入った。自分の大切な部下で親友でもあるケリーさんに攻撃をしようとするのが我慢ならないのだろう。


(でもカイルの言うとおりよね。彼は私が召喚される前からずっとカイルやアルフレッド殿下と一緒に過ごしていて信用できる人だ。それに師匠はケリーさんの何を見て裏切り者だと言ってるんだろう?)


 するとその言葉を聞いたジャレドは「たしかに君の部下に得はないか」と呟き、攻撃しようとしていた手を下ろし首をかしげた。


「じゃあ、粗忽者(そこつもの)かな?」


 ケリーさんへの呼び方が裏切り者から粗忽者に代わったけれど、彼が王女に情報を渡したことを取り消す様子はない。ケリーさんもそれに気づき、誤解を解こうとあわてて話し始めた。


「な、なにを言っているのです? 俺は裏切ってもいないし王女に情報を漏らすこともしていません!」
「え〜? だってそこに証拠があるじゃないか」


 師匠はキョトンとした顔でケリーさんの腕を指差している。そこはさっき私が指摘した怪我をしている箇所で、今はハンカチが結ばれていた。
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