すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「聖女サクラ様。いや、もう元聖女でしょう。結界の修復も終わり、再び忘却の呪いがこの国にかかりました。もう諦めなさい。あなたの役目はありません。瘴気もなくなるので、司教様があなたを召喚することもないでしょう。でもね、私は親切ですからあなたを元いた世界に帰してあげますよ」

「そ、そんな……!」


 ニヤリと笑った二人は逃げようとする私を捕まえると、両手両足を縄で縛り始める。そして新しい魔法陣を取り出しその上に私の体を乗せ、動かないように近くの木に縄でつないだ。


 こんなのまるで生贄だ。私は恐怖でぶるぶると震え始め、声を出すことができない。それなのに目の前の二人は満足そうに私を見てほほ笑んでいる。


「さようなら、元聖女」
「カイルは私が幸せにしてあげるわ」


 二人はクスクスと笑いながら魔法陣に手を置く。二人の魔力がゆっくりと流れ、私の体が光り始めた。その時だった。


「ぐわっ!」
「きゃあ!」


 突然目の前にいたアンジェラ王女たちが、森の奥のほうに吹き飛ばされた。なにが起こったのかまったくわからない。わかったのは泥だらけの二人が地面に倒れていること。そして二人が飛ばされる前に、大きな虹色の玉がぶつかったことだけ。


(虹色の魔力の光。もしかしてあれは……!)


 目を疑うその光景に呆然としていると、遠くから私の名前を呼ぶ声が聞こえた。
< 189 / 225 >

この作品をシェア

pagetop