すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(どうして? 神様は私たちに聖魔力を授けたんでしょう? 私もカイルもいっぱいこの国のために頑張ったよ? それなら助けてよ……!)


「うっ……ゲホッ……」
「カイル!」


 カイルがつらそうに咳き込んでいる。首元までボタンが閉まっていて、苦しいのかもしれない。私は少しでもラクになってもらおうと、カイルのシャツのボタンを急いで外した。その時だった。


 カシャンと金属がこすれるような音がした。


「これは……」


 カイルの胸元でなにかがキラリと光っている。


「カイル……!」


 そこにあったのは、二人で贈りあったネックレスだった。細いチェーンの真ん中にお互いの魔力を入れた小瓶がついていて、私がカイルの首にかけてあげたのだ。


(ずっと持っていてくれたの? 私のことを覚えていない時もずっと……)


「カイル、待っててね。絶対に助けるから」


 私はその小瓶を握ると蓋に手をかけた。ゆっくりと慎重に。この中にある私の聖魔力を絶対に取りこぼさないよう、私はそっと瓶を開けた。
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