すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜
そしてパリンとガラスが割れるような音と同時に空が虹色に光ると、結界にピシピシとひびが入る。最初は落雷のような大きな割れ目だったのがあっという間に細かくなっていき、最後にはパアンと弾けるように結界が割れた。
(ひえ〜! どうしよう! 怒られる!)
この国を瘴気から守っている結界が粉々になってしまった。それでもよく見ると、うっすらと膜が張っているようにも見える。穴が開いている様子もなく、瘴気も入ってきていない。
(なにあれ? 空全体が虹色にキラキラしてるけど、私なにか変なの作っちゃったのかな?)
「ねえ、カイル。あれって……きゃあ!」
「サクラ!」
後ろからいきなりカイルに抱きしめられ、大きな叫び声をあげてしまう。苦しいほどにきつく、まるで私に縋っているような抱きつき方に、驚いて後ろを振り返った。
「どうしたの? カイ――」
「全部、思い出した……!」
「え……」
カイルのその言葉にドクンと胸が跳ね上がり、喉の奥が苦しくなる。
(今、なんて言ったの……?)