すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


 するとそんな歓喜の雰囲気に包まれた通りの一角に、懐かしいお店を見つけた。


「カイル! あのお店……!」
「ああ、本当だ。懐かしいな」
「入ってもいい?」
「もちろんだ」


 皆には外で待ってもらい、私とカイルの二人でお店に入っていく。チリリンと扉のベルが鳴り、それすらも懐かしくて涙が出てきそうだ。


「これだわ」
「ああ、これだ」


 以前と同じように私が見つけ、カイルが二つ買ってくれた。違うのは今回は箱を付けてもらったことだけ。私がそれを大切に胸に抱えると、また二人で手をつないで歩き出す。


「素敵な結婚式にしようね」
「ああ、サクラの望みはすべて叶えるから、なんでも言ってくれ」
「やったあ! 明日から忙しくなりそう!」
「住むところも考えないとな」


 その言葉にカイルとの新婚生活を想像して、思わず顔がニヤけた。そしてその幸せな妄想は王宮に着くまでずっと続き、私はアメリさんにクスクスと笑われるのだった。

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