すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(あの男の人、アンジェラ王女の家庭教師?)


 見覚えのあるその人の名は、たしかエリックだ。アンジェラ王女以外の人には全員無関心で、もちろん私も会話すらしたことがない。隣に立つ王女はエリックの提案に「それが一番良い方法だわ」と満足そうに笑っていた。


 しかし、その提案を聞いたカイルは、苦々しい顔で二人のほうを振り返る。


「アンジェラ王女、拷問による自白は国家間で禁止されております。この侵入者が他国の者だった場合、大問題ですよ。それに騎士団に命令を下せるのは、アルフレッド殿下だけです。殿下も明日には王宮に戻ってきますので、それまでこの者の処遇は保留にいたします」


 その返事にあからさまに感情をむき出しにしたのは、やはりアンジェラ王女だった。ワナワナと体を震わせ、私を指差すと大声で叫びだす。


「なら、すぐにこの者を牢屋に入れなさい! わたくしは聖女としての仕事があるのですから、こんな女を見ていたら魂が汚れてしまうわ!」


(聖女? アンジェラ王女は、今自分のこと、聖女って言った?)
< 24 / 225 >

この作品をシェア

pagetop