すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(マラソンしてたらヒヨコが一生懸命ついてきて、微笑ましく思う感じだろうか?)


 そうイメージするとたしかに私もニヤニヤしちゃいそう。そんなことを思っていると、後ろを振り返ったカイルがじっと私の靴を見ていた。


「それにしても、その靴は見たことがないな。女性が履くものでもないし。やっぱりサイラはこの国の者じゃなさそうだ」


 貴族じゃなくてもこの国の人は、スニーカーのような靴は履かない。靴紐や金具がついていないシンプルな革靴ばかりだから、やはり目立つようだ。


「申し訳ないが、ケーナに着いたら、服もこの国のものに変えたほうが良さそうだ。しばらく追っ手は来ないだろうが、目立つと足取りがつかめてしまうからな」


 もう苔で転びそうな場所は終わり、だいぶ歩きやすい場所になってきた。それでもカイルは私の手を離そうとせず、私も手を離すタイミングを見失っている。


「ケーナは旅の者が集まる場所だから、そこまで目立たないと思うが。サイラは顔立ちも違うから、覚えられやすいだろう。もうすぐ森を出るから、俺のマントを着ておいてほしい」


 そう言うとカイルは、バサリと私にマントをかぶせた。平均身長の私に、カイルのマントは大きすぎる。日本でいう「てるてる坊主」状態になった私だったが、やはり頭上から笑いをこらえる声が聞こえてきた。
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