すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(そんな会話ばかりして、私のことをすごく可愛がってくれたんだよね。教会のみんなだって、すごく優しかったし)


 もちろん私が聖女だからというのもあるけど、聖教会の人はみんな天真爛漫で朗らかな人たちばかりだった。


「サイラ、大丈夫か?」


 そんな過去の思い出に浸っていると、ぼうっとしているのに心配したカイルが声をかけてきた。私はコクンとうなずくと、カイルに手を取られ馬から降りる。


「おや? カイル様、その女性はいったい……?」


 司教様が私の存在に気づき、不思議そうに見ている。


(やっぱり、司教様も私のこと覚えてないみたい。はあ……、予想どおりだけど淋しいな)


「実はこの女性のことで、教会に来たのです。詳しくは中で話したいのですが」
「もちろんです。昨日、急に転移の魔術を使ったでしょう? しかもかなり大量に聖魔力を使ったので驚きましたが、そのことに関係がありそうですね」
「ええ、少し重要なことなので、申し訳ないのですが人払いをお願いします」
「なるほど、わかりました。では、ブルーノ。カイル様をお部屋へ。アメリはお客様のおもてなしを」


 司教様のその呼びかけに、ひざまずいていた二人の男女が立ち上がった。
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