すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


(気まずい思いさせちゃってごめんなさい。でも二人は悪くないからね!)


 しかしそんな私の励ましが届くわけもなく、部屋はしんと静まり返ってしまう。するとやはり最初にこの雰囲気をものともせず話し始めたのは、ジャレドだった。


「まあまあ、二人とも! 聖魔力をもった二人の記憶がないってことは、なにか大変なことが起こってるってことだよ。そうだな。まずはサクラが何者なのか話そうか!」


 足を組み肘掛けに両手を置く様子はものすごく偉そうだけど、これで私のことがわかってもらえる!


(師匠、頑張って!)


 声が出せないから、師匠に頼るしかない! 私が期待を込めてジャレドを見つめていると、なぜか彼はニヤニヤと笑って落ち込む二人を見ていた。


(あ、駄目だ。この顔は師匠が復讐したい時の顔だ)


 真面目な二人によく怒られていた彼は、常日頃二人にやり返せないか考えている子供のような人だった。今の顔は「サクラ! あの二人への良い仕返しを思いついたぞ!」と言ってくる時とまったく同じだ。
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