すべてを奪われ忘れ去られた聖女は、二度目の召喚で一途な愛を取り戻す〜結婚を約束した恋人には婚約者がいるそうです〜


「そんなの俺が知りたいよ。反対になんで伯父さんたちは忘れてるわけ? じゃあ、次はなんだっけ? え〜っと……サクラに魔力がないってことだったな。じゃあ、見てみようか」


 まったく知りたい答えになっていない返事を返され、カイルはため息を吐きながら私の魔力の件について話し始める。


「彼女の魔力は、王宮でもここでも検査板ですでに調べました。どちらもなんの反応もなかったのです」


 少し呆れたようなカイルのその言葉に、師匠は鼻で笑って私のほうを振り返った。


「ふ〜ん。見くびってもらっちゃ困るな〜。僕は天才魔術師なんだよ? 魔力の流れくらい本人にさわればわかる。ではサクラ、こっちにおいで」


 師匠が私に向けて手を差し出し、私もそれに従った。


(魔力の流れを見てもらうのは初めてだけど、魔術に関して師匠は天才だ。きっと原因がわかるはず!)


 一瞬カイルが私の手を止めようとしたが、司教様に「カイル様……」と呼びかけられ思い直したようだ。そのかわり、私の後ろにピッタリとくっついて、師匠の監視をしている。


「じゃあ、サクラ。目を瞑ってね〜」


 指示通り目を瞑ると、師匠が私の両手をつかんだ。そのままじっとしていると、なにやら顔の近くで人の気配がしてくる。すると突然、私の体がふわりと持ち上がった。


(え? え? な、なに?)


 目を開けると私はカイルに抱きか上げられていて、師匠は呆れ返った顔でカイルを見ていた。

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