だって、君は俺の妻だから~クールな御曹司は雇われ妻を生涯愛し抜く~
「とくに予定はありませんが……」

「ならそのまま空けておいてほしい。瑠衣はどこか行きたいところはあるか?」

 いつものように久弥さんのご飯の支度したあと、彼の席の前に座った。

「久弥さん、光子さんに言われたのを気にしています?」

 とんとん拍子に話を進めていく久弥さんに切り込むと、彼は渋い顔になる。

 先日、ふたりで光子さんのところに顔を出した際、ちゃんと夫婦ふたりで過ごす時間は確保しているのか、どこかに出かけたりしているのかと詰め寄られ、うまくごまかせなかった。

 母の手術が成功した旨も伝えていたので、久弥さんの仕事が忙しいという言い訳は、火に油となる。久弥さんだけが原因なのではなく、私も母がいない分、休みの日には施設に顔を出して手伝ったりしていた。

 しかし光子さんは久弥さんに真面目な顔でお説教を始める。

 普通の夫婦、ましてや新婚なら休みの日が合えばふたりでゆっくり過ごしたり、出かけたりするのは当たり前かもしれない。

 そういった経緯があり、久弥さんからの誘いは驚きよりも、やはり彼は真面目だという気持ちで受け止める。

「たしかに祖母には、ああ言われたが……」

 珍しく久弥さんは歯切れ悪く答える。

「俺自身が前から瑠衣を誘いたいと思っていたんだ」

 油断していたら、とんでもない発言が彼から飛び出した。戸惑いが沸き起こり、反応に困ってしまう。

「いつものお礼も兼ねて」

 しかし続けられた言葉のおかげですぐに冷静になれた。そういう意味なんだ。納得して久弥さんに笑顔を向ける。
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