まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 手で鼻を押さえながら話すから、この前に遭った彼とのお風呂でのハプニングを思い出して私は吹き出した。

「もしかして、鼻血出ます?」

 水着を着た私が近寄って顔を覗き込むと、雄吾さんはますます顔を赤くしてしまった。

 ひとしきり、一人で水遊びした私は、プール際に用意されていた大きな防水ソファに寝そべったままの雄吾さんに声を掛けた。

「雄吾さん。せっかく水着を着てるのに、プールには入らないんですか?」

「……鼻血出るから、俺はプールには入らない」

 どうも揶揄い過ぎて、拗ねてしまったようだ。雄吾さんはそっぽ向いて、私が居る方を向いてくれない。

「もう、日が沈み始めますよ、ここだと足だって付きますし、せっかくだから見やすいこっちで見ましょうよ」

「……透子が迎えに来てくれたら、行っても良い」

 私は微笑んでからプールを上がると、差し出された雄吾さんの大きな右手を両手で引っ張った。彼はすぐにソファから立ち上がって私から顔は逸らしているけど、私がゆっくりと誘導する方に歩いて来てくれた。

「ほら……綺麗ですよ」

 海側は、繋ぎ目のない大きなガラス張りだ。あまりに綺麗に出来ていて、どういった技術かはわからないけれど、徐々に赤くなっていく夕焼けが見えて美しい。

 夕日を見てはしゃいだ私を愛おしそうに見つめると、雄吾さんは抱き上げて長いキスをくれた。陽が暮れて辺りが薄紫になってしまうまで、ずっと。

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