まんまるお月様とおおかみさんの遠吠え①~人狼夫たちとのドタバタ溺愛結婚生活♥~
 私は隣に居た春くんを見た。春くんは、眉を顰めて少しだけ考えるようにすると、ああと息をついた。

「あれ。真理亜か。めっちゃくちゃ久しぶりだね~」

 女の子はパンを載せているプレートをサッと置いて、こちらへと駆け寄ると春くんの右腕にしがみついた。

「えー、すっごい背が伸びてるし、かっこ良くなってる! 昔はチビで女の子みたいに可愛いだけだったのに、今は大違いだね……ね。春。今だったら、結婚してあげても良いよ?」

 春くんは困ったように笑うと、やんわりと彼女の手を外そうとしていた。

 けど、真理亜さんはますます力を入れて、春くんの腕にしがみついているみたいだ。

「あのさ。俺、もう既婚者なんだ」

「え? 昔は真理亜に結婚して欲しいって言ってたじゃん。今だったら良いよって言ってるのに」

「……真理亜、ごめん。今は奥さんも居るし、離れて欲しい」

 春くんは真理亜さんにきっぱりと言うと、隣の私の方を見てすまなさそうな顔をした。

 真理亜さんは私をチラッと苛立たし気に見ると、くんくんとちいさな可愛い鼻を動かした。

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