契約彼氏とロボット彼女

サイン




「いいよ。あんたのお陰でアパートを追い出されずに済んだし、あんた自身も何か深い事情を抱えてそうだから契約するよ」

「ありがとうございます!」


「但し、この生活レベルに合わせる事が条件だ。いいか、金は1万円以上この家に持ち込むなよ」

「無理です」


「どうして?」

「1万円ぽっきりじゃ一回分のランチ代にも満たないからです」

「(俺は一ヶ月の食費が1万円だ)〜〜〜っ! じゃあ無理だ。契約不成立という事で」

「うっ……、我慢します。それじゃあ、早速契約書にサインを……」



沙耶香は右京から受け取った契約書を颯斗に渡した。
しかし、内容をざっと目で追ってみるが何故かサイン欄が設けられていない。



「契約期間は明日から二十八日間ね。この契約書には名前欄がないけど何処にサインをすればいいの?」



顔を見上げてそう聞くと、沙耶香はサッと自身のおでこに指をさした。



「ここです」

「は?」


「ここに……、キスの印をお願いします」



沙耶香は無表情のまま頬をピンクに染める。
颯斗は想定外の展開に思わず聞き返した。



「へっ?」

「だからおでこにキスを……。何度も言わせないで下さいっ。恥ずかしい……」

右京「うぐぐぐ………(てめえ)」



右京は片膝上げて左内ポケットに手を入れると、颯斗は再び銃で打たれる恐怖が襲いかかって後ろに仰け反り手のひらを向けた。



「うあぁ……、待て! 早まるな! 撃つな。俺の家に防犯カメラはついてない。俺は長生きしたいんだあぁぁ……」

左京・沙耶香「……?」



叫び声が窓の外へ漏れてから5秒ほど空白の時間はあったが、皆が落ち着いて腰を下ろしたタイミングでボディーガードが見守る中、彼女の額に契約のキスをした。



チュッ……



だが、彼女はそのまま気を失って後ろに倒れていき、両サイドの右京と左京がすかさず身体を支えた。



左京「お嬢様~!」

右京「ふんぬーー! (大丈夫ですかー?)」

颯斗「……」



俺はこの時確信した。
彼女はキス一つで気絶しちゃうくらい俺が好きなんだと。



こうして俺は先々に不安を感じながら、何処の馬の骨ともしれない彼女との生活をスタートさせた。

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