契約彼氏とロボット彼女

インスピレーション




ーー時を遡る事、数時間前。

アパートで颯斗の外出を見届けた沙耶香は、
洋服や生活用品をスーツケースの中にしまい始めた。

颯斗との生活はもうお終い。
そう思うだけで作業の手がついスローペースに。



時刻は朝8時50分。
挙式会場に向かう為、10分以内にここを出発しなければならない。





ピンポーン……

インターフォンに気付いて扉を開けると、左京が両手で段ボールを持って現れた。



「お嬢様、おはようございます。先日お預かりしたテレビをお持ちしました。置き場はちゃぶ台の横で宜しいでしょうか?」

「ありがとう。すぐに追いつくので車で待機してて下さい」


「かしこまりました」



左京は部屋に段ボールを置くと、一礼してから部屋を出ていく。

荷物の整理が終わって玄関まで二つのスーツケースをガラガラと引いていき、約一ヶ月間お世話になった部屋をゆっくり見回す。



「この部屋とも今日でお別れか……」



一方的に恋した相手に、初めて上がった彼の家。
そして、生まれて初めて警護のつかない日々。

恋人契約の話を持ち出した日は彼の性格さえ知らなかった。
でも、四年前に出会った瞬間からインスピレーションを感じていたせいか、不思議と不安を感じなかった。

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