君とふたりで。
1章 新しい季節

友達






「皆さん、ご入学おめでとうございます」




──透き通るような青い空。


まだ冷たい風が頬を撫でる。



今日から新しい生活が始まる。


見慣れない生徒達に、先生方。



目に映る全てが、あたしを新鮮な気持ちにさせた。




市川 咲良(さくら)15歳。



真新しい制服に袖を通し、中学よりも短いチェックのスカート。


ネクタイを緩めに結ぶ。



“受験”という難関をクリアし、今日から憧れの高校生。



…と言っても、あまり大きな変化はない。



黒いショートの髪に、すっぴんの顔。



可愛いわけじゃないし、特別スタイルがいいわけでもない。


かといって太ってはいない…と思う。



何もかもにおいて中途半端なあたし。



だけど、人見知りの激しさだけは誰にも負けない…っていう、意味の分からない自信がある。



全然誇れることじゃないんだけど、あたしは人と話すのが苦手で。



おとなしいわけでもないのに、周りからは“静かな子”だと思われていた。



肌が白いのもあり、なんとなく、そんなイメージが出来上がっていたのかもしれない。




< 1 / 102 >

この作品をシェア

pagetop