来る日も来る日もXをして
「やっ・・・!」

「その固いアタマ、僕が柔らかくしてあげましょうか?マッサージの時に触ってないところも触って。僕はそっちもすごいですから。さっきトイレで化粧品見たでしょ?今まで何人の女子をとろけさせてきたかわからないです。てか、更科さん僕に『脱いで。』って言われてそっちだと思ったでしょ?」

「は・・・はっ!?何言って・・・!」

「図星ですね。
わかりやすいなぁ。」

「ち、違っ!」

「覚悟した感じで脱いでましたもんね。つまり、僕にそっちをされる気持ちもあるってことですよね。」

東雲くんは私の首に唇を当てた。思わず声が出てしまう。

「ここ、弱いでしょ。そういうのも僕はわかりますよ。天性の才能と豊富な経験でね。」

「やめて・・・っ!」

「ちなみにそっちもこちらからはアプローチせずに向こうから来ます。アンテナをキチンと張ってる子は、僕が会社でしてるみたいな冴えない見た目してても僕が放つ輝きに気づくんですよ。いや、隠しきれてないのかな。」

「・・・。」

「どうしようかな~?キスの映像使って、今度はそっちをさせろって脅そうかな~?そうしたら更科さんは従うしかないですよね。『二度とうるさいこと言いません。』て誓うのなら、許してあげてもいいですよ。」

そこで私の中の何かがキレて、気づいたら東雲くんを平手打ちしていた。背筋がスッと寒くなる。やってしまった。でもこうなったら後にはひけない。

「ばらまきたいならばらまけば!?」

呆気にとられる東雲くんを置いて一目散に玄関まで走る。ロビーに飛び出すとフロントの老紳士は来た時と変わらぬ様子で接してくれた。白い手袋をはめた手でエレベーターのボタンを押してくれてから深いお辞儀で見送ってくれる。

マンションを出て、街に出るとやっと現実に、自分の世界に戻ってきた気がした。東雲くんの家もそこであった出来事も夢のようだった。夢であってほしかった。
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