来る日も来る日もXをして

弄ばれる朝

翌日。気持ちを奮い立たせてメイクを強めにし髪もビシッとまとめ、モノトーンのパンツスーツスタイルで会社に向かった。完全に戦闘モードだ。

今までのところ、社内のグループメッセージや東雲(しののめ)くんのSNSには例の動画は上がっていない。けれど私が入っていないメッセージグループや個人メッセージ、私がアカウントを知らないSNSで拡散しているのかもしれない。

(すずな)先輩、おはようございます!」

地下鉄の出口を出たところで後ろから後輩の美彩(みあや)ちゃんに声をかけられる。

「お、おはよう、美彩ちゃん、今日は早いね。」

「私はいつも通りですよ?先輩が遅いんです。」

そう言われて時間を確認すると確かに彼女の言う通りだった。いつもと違う身支度に時間がかかってしまったのかもしれない。

「どうしたんですか、その格好?メイクと髪も。菘先輩いつもナチュラルフェミニンな感じなのに。今日内勤でしたよね?帰りに何かあるんですか?」

「ううん。今日はこういう気分だったから・・・。」

「でも先輩美人だからすごく似合いますね!」

「ありがとう・・・あのさ美彩ちゃん、私のことで何か噂とか聞いてない?」

「菘先輩の噂?私は特に知りませんけど。えっ、何かやらかしちゃったんですか?」

美彩ちゃんの瞳が好奇に満ちたものになる。

「ううん。聞いてないならいいの。」

拡散するのはこれからなのだろう。それか、いつそうされるかと私が不安でいる姿を楽しむつもりなのかもしれない。東雲くんは油断ならない。でも彼の思うようにさせるつもりはない。

「あ、(しのぶ)くんだ。」

「!?」

美彩ちゃんの声で顔を上げると、今私の思考を占拠していた人物、東雲忍くん───冴えない外見ver.───がだるそうに歩いていた。
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