暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
プロポーズ
「イヤー、素敵なお店ですね」
「ありがとうございます」

生まれて初めて自分で買ったブランド物の服を着て、私はオープンしたばかりのショップのフロアに立った。
黒と金と差し色のシルバーが高級感を演出する店内には、すでに多くのお客様が詰めかけている。

「オープンおめでとう。さすがに大賑わいだね」
「ええ、ありがとうございます」

声をかけてくれたのは圭史さんだった。
この店の開店を危うくさせた張本人でもある圭史さんに複雑な思いはあるけれど、圭史さんの努力で商品がそろいオープンできたのも事実。
私は笑顔で挨拶をした。

「あの時創介を説得してくれた望愛ちゃんのお陰で首の皮一枚つながったよ。ありがとう」
「私は別に・・・」

ただあの場を切り抜けようと思っただけで、圭史さんを助けたわけではない。
どちらかと言うと、創介さんと一条プリンスホテルを守りたかった。
それに、いくら私が提案し創介さんが受け入れたからと言っても、今日のオープンまでにこれだけの商品を集められたのは圭史さんの力に他ならない。

「これだけの品を集めるのは大変だったのではありませんか?」

時間もない中無理を言って強引に集めるには、普段のような価格交渉はできないはず。
きっと高値で仕入れるしかなかったのだろうと思う。

「まあね、龍ヶ崎の資産を崩す結果になって母や祖父は怒っているけれど、仕方ないさ。俺が蒔いた種だ。犯罪者にならなかっただけいいと思わないとね」
「圭史さん」
今回の事件の動機に私が絡んでいるのだと知っているからよけいに、複雑な思いだ。

「大丈夫だよ。これからはビジネスに力を入れて、今回の損失なんてすぐに取り返すから」
「ええ、期待しています」

圭史さんならきっと大丈夫だと、私は確信している。
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