暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
「とにかく、落ち着いてください」

数分後、副社長室に現れた谷口課長が龍ヶ崎夫人と副社長の間に立った。

「坂本さん、大丈夫?」
私にタオルを差し出して、課長が気遣ってくれる。

「ええ、私は大丈夫です」

髪はベトベトするけれど、顔は拭けば平気。
ただ、ブラウスとスカートは赤く染まってしまった。
一日このままってことはできないだろうから・・・そうだ、できればホテルの制服でも借りようかな。おそらくそれで誤魔化せると思う。

「龍ヶ崎夫人、今お車の手配をしましたので」
どうぞお帰り下さいと課長が部屋の外に促す。

「隼人」

不満そうな顔をした副社長が課長に何か言いたそうだけれど、課長は軽くうなずくだけ。
どうやらこれ以上何も言うなってことらしい。
確かにこれ以上話してもこじれるばかりだろうから、ここは一旦引く方がよさそうだ。

「坂本さん、僕は奥様を下まで送ってくるからここで待っていてくれるかな?」
「はい」
さすがにこの格好ではどこにも行けない。

「ここはいいから」
お前は行けと手を振る副社長。
「そうか、じゃあ任した」
課長はニコニコしながら出て行った。
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