暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
Side 創介
「一条副社長、こちらを」

まだ騒然とするパーティー会場で背後からかけられた声。
振り返ってみると、差し出されたのはホテルのルームキーだった。
頼んだ覚えはないと言いそうになったが、相手の顔を見て言葉を飲み込んだ。
目の前にいるのは平石コンツェルンの会長秘書。
俺も何度か顔を合わせたことがある人だから間違いない。

「ありがとうございます。平石会長にもよろしくお伝えください」
「はい」

たまたまパーティーの行われた会場が平石コンツェルンの系列ホテルだった。
そこで俺の秘書がアクシデントに巻き込まれたから、気を付かってくれたのだろうと思う。
正直、ずぶ濡れのまま連れて帰ることもできず、部屋をとろうと思っていたところだったから助かった。
ここは素直にご厚意に甘えよう。

「坂本、行くぞ」
「いえ、でも・・・」
立ちあがったもののまだ放心状態の彼女。

「ここにいて、これ以上注目を集めたいのか?」

なかなか動こうとしない秘書の手を引き俺は歩き出した。
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