暴君CEOの溺愛は新米秘書の手に余る~花嫁候補のようですが、謹んでお断りします~
これは、恋ですか?
せっかく築きかけた良好な関係も、壊れてしまうのは一瞬。
お互い気まずい思いがある分こじれるのは早くて、勤め始めた頃よりも会話が減ってしまった。
もちろん、秘書としては積極的に声をかけて上司との意思疎通を図るべきなのだろうと思うけれど、意地っ張りな私はかわいげのない態度をとり続けていた。

「ここ、データが古いぞ」

ポンとはじかれたようにデスクの上に置かれた書類。
副社長のデスクの前まで行き確認すると、入っている数字は一昨年のものだった。
確かこの書類はホテルの季節別売り上げの収支をグラフ化したもので、十日ほど前に副社長から依頼を受けたもの。
さすがに私では作れず秘書室に依頼したはず。

「作成者は、高井桃か?」
「ええ、でも、私がお願いしたものですから」

自分でできなからお願いしたわけで、出来上がったものの確認ぐらいはちゃんとすべきだった。
そういう意味での責任は、私にある。

「午前中のうちに作り直させてくれ」
「午前中ですか・・・」

高井さんだって仕事をいくつも抱えているだろうから、申し訳ないな。

「間違えたのはあいつなんだから、ガツンと言ってやれ」
「はい」

一応返事はしたものの、手伝ってもらった身としては何とも言いにくい。
いっそ自分で直してみようかとも思うけれど、もし間違ったらと思うと手が出せない。
困ったなとデスクに座っていると、

「もういい、俺が言う」
そう言って、副社長は課長を呼んでしまった。
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