君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
職人は手際よくジゼルの頭の寸法を測って
自身のメモ帳に数値を記入していく。
「今までは基本の形に宝石やラメでアクセントをつけたり、羽飾りをつけたりっていうのが主流でしたけど、最近では仮面の形そのもので個性を出す方が多いですね。」
そう言いながら仮面のサンプルブックをジゼルに見せてくれた。

色や形も本当にいろいろで、見ているだけでも楽しい。
「その時期、その時期で流行が変わるんですよ。と言っても流行を楽しんでいるのは平民たちが多くて、王女様のような上流階級の方は案外シンプルなものを上品に着けられてますね。」
シンプルと言われても、なんだか味気ない。
せっかく参加するのだから、どこかに個性を出したいとジゼルは思った。
悩みながらサンプルブックをめくっていると、
動物の姿をした仮面のサンプルに目が留まる。
「動物の形の仮面も根強い人気がありますよ。」

マグノリアの王妃だった頃、
自分のモチーフとして猫を選んでからジゼルにとって猫は特別な愛着がある。
ネコ型のマスクに決めたジゼルは色やデザインを職人と相談して、
お気に入りの1枚をオーダーした。
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