君の愛に酔う      ~藤の下で出会った2人の物語~
そういうわけで、好意にどっぷり甘えてのびのびと過ごしていたクララだが、
いつまでもダラダラしているわけにもいかない。
「もう少しゆっくりしていきなさい」という父母の説得を振り切って、
クララは怪我から2カ月で任務に復帰を決めた。
そして今日がその復帰の日である。

この日は父親が付き添ってくれていたのだが、どうも恥ずかしさが抜けない。
マグノリア王国軍のトップである元帥の地位にあるのは国王だ。
その下が大将で現在はヴァルモーデン侯爵が務めている。
歴戦の猛将だが高齢のため、引退も近いと噂されている。
そのため、実質軍を動かしているのは3人いる中将たちで、その一角を担っているのがクララの父なのだ。
軍の中でも大物中の大物なのだから、少し廊下を歩こうものなら目立ってしょうがない。
道行く誰もに敬礼やお辞儀をされる父の背中に隠れて、
クララはできるだけ顔を伏せていた。

「お前はさっきから何をコソコソしてるんだ。ほら、ついたぞ。」
不自然なほど自分の後ろで縮こまっている娘にラーデマッハー中将が声をかける。
騎士団本部の扉の前に立ち、クララは深呼吸して扉をたたく。
「おはようございます。本日から職務に復帰いたしますクララ・フォン・ラーデマッハーです。団長にご挨拶に参りました。」
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