溺愛ヤクザの蜜愛条件~契約のキスが甘すぎる~
この店は女性客だけでなく男性客も他店に比べ多い―とはいえ、連日花が売りきれる程売れているかと言われれば、それは流石に難しい。
その為、この時間になると客足はやはり鈍くなる。

「今日はもうお客さん来ないかな?」

店内のカウンターでひとり黙々とブーケ作りの練習をしていた乙掛美祐《おとかけみゆ》は、ふと時計を見た。

店長がフランス旅行で買ったというお洒落な時計の針は午後七時四十分を指している。
いつもこの時間になると鉢植えやオーダーの花束はほぼ無く、売れるとしたら店先に並べているブーケくらいだった。

「少しずつ片付けようかな」

閉店は八時なので、今から片付ければ丁度いい時間になるだろう。

手にしていたブーケをカウンターの上に置いて美祐は椅子から立ち上がると、店の表へと向かった。
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