ホワイトビターショコラ〜幼馴染からの卒業〜



九竜くんは寮を出て行った。
最後は笑顔で見送ることができて、スッキリしてる。

これで晴れやかに春を迎えることができそう。
そうだ、せっかくだから動画回そうかな。


「ヤッホー!くるみですっ!今日は卒業式だったんだ…っ」


いつも通り動画を撮り始めたのに、ボロっと大粒の涙が零れる。

……あれ?
なんでだろう、私ちゃんと笑えてるのに……。



「こんな時まで、ヘラヘラ動画撮ってんじゃねーよ」

「…橙矢…」

「バカじゃねーの?泣きたいなら泣けばいいだろっ!」

「…ぅっ、うわあああああああっ」



橙矢の言葉に、感情が爆発した。

なんでよ、なんでなのよ。
私は笑って終わりたかった。

橙矢なんて口が悪くてデリカシーないくせに、なんでこういう時は気づくのよ…っ。

なんで橙矢の前では子どもみたいに、大声で泣けちゃうんだろう……。



「…俺にしろよ…」



絞り出すような橙矢の一言は、私の泣き声に掻き消えた。

橙矢はハンカチを差し出すわけでもない。
無理矢理私の頭を自分の方に引き寄せて、泣き顔を隠すように寄り添ってくれた。

それがまたひどく安心できて…また涙が止まらなくなる。
私は橙矢の隣で泣き続けた。

この涙が枯れるまで。



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