ホワイトビターショコラ〜幼馴染からの卒業〜



くるみが動画を撮ろうとするけど、撮れない奴が一人いる。

あいつは俺のことは無許可で勝手に撮るけど、意外と気配りのできる奴なんだ。
クラスで動画撮る時も、いきなり回すことなんてなくて、一人一人にちゃんと尋ねている。

中にはカメラを向けられるのが苦手な奴もいるから、そういう奴のことは絶対撮らない。

だけど、最終的にはそんな奴も巻き込んで楽しい動画を撮ってしまうのが、くるみのすごいところでもある。


そんなくるみが唯一撮れないのが、九竜蒼永という男だ。


俺たちと同じ寮生で、剣道と空手で全国制覇する実力者。
うちの学校はスポーツの名門であり、かくいう俺も全国区のバスケ部強豪校に憧れて入学した。

寮に入ったのはくるみが理由だけど、バスケを頑張りたいってのも本当だ。

そんなうちの中学でも、九竜はズバ抜けていたと思う。
剣道と空手それぞれで全国優勝。しかもどっちも3連覇。

おまけに顔はアイドル級のイケメン。
天は何物を与えてんだよ、って言いたいくらいだ。

とは言え、努力しなきゃこんな結果は出せてない。
同じスポーツをやる者として、それはわかる。

しかも1年の時から同じ寮で生活してるんだ。
九竜が本当にすごい奴ってこともわかってる。


わかってるけど…、くるみが惚れてる男なのが、悔しくて仕方ない。


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