「桃先輩は可愛い」【完】
「…桃先輩はいつもあんな感じなんですか。」
昼休み、食堂で柚と一緒にご飯を食べようとしていると、クラスの男子に声をかけられた。
「桃、早食い対決しようぜ!」
どうやら、勝負の申し込みだったみたい。
完全に女としてみられていない私は、こうしてたまに男子の輪に入り早食い対決をしたりする。
「やきそばなら負けない!」
今回の食品はやきそば。私の大好物。
まだご飯を食べる前でよかった。
「「「おりゃぁぁ!」」」
男子数人と私。
食堂のど真ん中で白熱のバトルを繰り広げた。
「…やっぱ桃には負けるわ。」
「ふん!私に勝とうなんて一億年早いわ。」
実は早食い対決ではいまだに誰にも負けたことがない。
「桃先輩。」
振り返ると冬野椿の姿。
食堂で冬野椿と会うなんて新鮮。
でもいつもより少し声が低くて、一瞬誰の声かわからなかった。
「あ、冬野椿。」
名前を呼ぶといつも笑うのに、今日は笑わず真顔のまま。
それにチラリとも周りを見ようとしない。
私だけを一点に見つめてくる。
「今日一緒に帰りましょう。」
「わ、分かった。」