とろける程の甘美な溺愛に心乱されて~契約結婚でつむぐ本当の愛~
たぶん、きっと、姉さんは悪い人じゃない。


それはわかる。


でも、姉妹だから仲良くしたくて何度も歩み寄ろうとしたけど、何だか最近は相手をする度に落ち込むことが多くなってきて……


「ごめん、涼香姉さん。私、そろそろ出かけないと。約束があるの」


嘘をつくのは嫌なのに、また……


こんなことの繰り返しで自己嫌悪に陥る。


「そうね、じゃあまた来るわ。私も今日はフレンチの予約があるの。2万円のコースをいただくのよ、楽しみだわ。琴音、お仕事大変でしょうけど頑張ってね」


「あっ、うん、ありがとう。涼香姉さんも……」


2万円のコース、そんなの今の私には何の興味もない。


嬉しそうにブランドのバッグを持ち、香水の匂いを振りまいて、涼香姉さんはさっさと部屋を出ていった。


いつまで続くんだろう、こんな不毛なやり取り。


この先、私達は、普通の姉妹として仲良くすることはできないの?


私は、完全に冷めてしまったミルクティーにようやく口をつけた。
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