好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。
「ありがとう、レヴィ。
レヴィもどうか、私のことを忘れないで。私のことをずっと想い続けてほしいの。
本当は忘れても良いよって――――レヴィはレヴィの幸せを見つけてほしいって言うべきだって分かってるんだけど、それでも私は……」

「忘れません。絶対に、絶対に忘れません」


 レヴィは間髪入れず、力強く請け負う。アリスはほんのりと目を見開き、それから嬉しそうに微笑んだ。


「私の全てはお嬢様のものです。お嬢様だけのものです。
どこにいても、何をしていても、私は貴女のことを――――貴女の幸せを願っております。レヴィはいつでもここに居ます。ここで、お嬢様のことをお待ちしております」

「うん……ありがとう。私、行ってくるね!」


 アリスは安心したらしく、軽やかに身を翻す。


「またね、みんな。またね、レヴィ!」


 太陽のように輝く満面の笑み。眩しくて――――あまりにも眩しすぎて、レヴィは目を細めて微笑みを浮かべる。

 馬車が段々と遠ざかっていく。アリスは窓から顔を出し、こちらに向かってずっと手を振り続けている。


「――――行ってらっしゃいませ、お嬢様」


 涙を拭い、微笑みを一つ。レヴィは恭しく頭を下げた。
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