好きな人の婚約が決まりました。好きな人にキスをされました。

4.崩れはじめた日常と、メリンダの決意

 次の日、メリンダはいつものように、日の出とともに目を覚ました。

 侍女たちの朝は戦場だ。悩んでいたら仕事にならない。

 顔色の悪さを隠せるよう、いつもより念入りに化粧をし、きっちりと髪を結い上げ、戦闘服に身を包む。そうすると、嫌でも仕事のスイッチが入った。

 ミーティングでその日のスケジュールと割振りを確認したあとは、厨房で湯を受け取り、主人の元へ急いで向かう。
 カーテンをそっと開け、寝室を陽の光でたっぷり包み込んでから、メリンダは王女殿下に優しく声をかけた。


「おはようございます、殿下」

「ん……おはよう、メリンダ」


 まだ十歳と幼いが、王女の目覚めはとても良い。メリンダはニコリと微笑みつつ、他の侍女たちとともに朝の準備を手伝った。

 洗面に着替え、目覚めのお茶の準備、肌や爪の手入れなどなど、朝からやることは山程存在する。
 けれど、主人にそうと悟らせては侍女失格。
 姫君の朝はあくまでも優雅に、上品でなければならないのだ。


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