幼馴染みの秘めた溺愛  ~お前は女神でヒーローで

鷹取を半ば呆れて見ていた私に、夢莉さんが頭を下げてきた。

「すみません…私、栃泉さんのこと誤解してました…失礼な事ばかり言って本当にすみませんでした」

その殊勝な態度は心からのものだと思えた。やはり素直な人なのだろう。

「いえ、私も言わなかったので。あの、頭を上げてください」

「ありがとうございます。…何となく分かってたんです…呉田さんが栃泉さんをお好きな事。でも私、諦めたくなくて…とはいえ本当に失礼な事を言ってしまい、本当にすみませんでした」

「いえ、本当に気になさらないで下さい」
…素直でいい人なのね。こんな人なら憎めないよね。


「ありがとうございます。…それでは私はこれで失礼します。呉田さん、お大事になさって下さい。それと……ご結婚、おめでとうございます。あの、お似合いです、呉田さんと栃泉さん。…あ!」

「…どうかしましたか?」

急に夢莉さんが、私の顔を見たまま「美桜さん…」と呟いた。

「あ、いえあの、すみません、これはどうでもいい話なんですけど……栃泉さんが呉田さんにお嫁に行ったら、その栃泉さんのお名前が推しの漫画家さんと同じ名前だったので、ちょっとびっくりしつつ親近感持っちゃいまして。…あっ、勝手に親近感とか生意気なこと言ってすみません!」

…ん?漫画家さんの名前…

「…あの、それってもしかしてカタカナの〝クレタミオ〞ですか?」

「はい!そうです!有名な漫画家さんですし、美桜さんもご存知でしたか!?」

「あー…えーと…」

キラキラした瞳の夢莉さんに言っていいのか少し困っていると、また鷹取がやらかした。

「夢莉ちゃん、知ってたんだ!そうそう、この美桜さんがその〝クレタミオ〞なんだよ!すごいよね!」
「えぇえ!?ホントですか!?ウソ!ヤダ!どうしよう!嬉しい!」
「お前…バカとりっ!」
「うわぁあ…ムゴモゴ…」


…涙を浮かべたキラキラした瞳で私を見つめる夢莉さんと…鷹取の口を押さえて締め上げる樹王…

…病室なのに…カオス…


せめて私は冷静でいようと心掛け、私のファンだと言う夢莉さんと口外しない約束をし(「そんなのもちろんです!誰にも言いません!」と言ってくれる常識のある人で本当に良かった)、鷹取は私からも締め、ようやく嵐のような時間は終わりを向かえた。ふぅ


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