幼馴染みの秘めた溺愛  ~お前は女神でヒーローで
幼馴染みが、わが家で同居!?
──それはいつもと変わらぬ日常に起こった。


五月のある日の夜中、樹王の家が近所の火災の延焼に巻き込まれたのだ。

樹王は出勤していて不在だったけど、一人で寝ていた樹王のお母さんは煙を吸ったらしく病院に運ばれた。

樹王の家はお隣ではあるが、家屋は庭と駐車場を挟んでおり、少し離れているため、わが家は難を逃れた。
しかし…樹王のお家は半焼までいかなかったものの、もう住めるものではなくなってしまった。

それから眠れないまま夜は明け…
午前9時過ぎ、私は勤務を終えた樹王の帰りを家の前で待っていた。


「樹王…おかえり…あの…」

けれど、実際に会うと、かける言葉が見つからない…


しかし樹王は私の頭をガシッと掴み、軽く揺らしながら「なに美桜がシケたツラしてんだよ」と笑った。

「樹王…」
そんな気丈に振る舞う樹王に、私が泣いてしまった。

「美桜、ありがとな。…まぁおふくろの症状も軽く済んだし、家もだいぶ焼け残ってるからな、親父の位牌や写真とかも残ってるだろ。大丈夫だよ」

「うん…でもお家はどうするの?おばちゃんは?」

「おふくろはとりあえず近くの親戚ん家に世話になるって」

「樹王は?」

「そうだな…どっか近くのアパートでも借りないとな。…今度こそ美桜と離れちまうんだな」
そう苦笑する樹王。

樹王が私から離れちゃう…と、胸がギュッと痛む。


すると、私の後ろにいたお母さんが、あっけらかんと言い放った。
「じゃあウチに住みなさいな」って!

お母さん、本気!?…って表情を見せると、「桜雅の部屋が空いてるし、ちょうどいいじゃない」と、やはりあっけらかんと言う。


「でもおばちゃん、俺の仕事は不規則だしさ…迷惑かけるし悪いよ」

「こんな時だってのになに言ってるの!それに美桜の方が不規則よ?ねぇ」

「う、そうだね…私の方が不規則で迷惑かけてるから大丈夫だよ」

「…美桜はいいのか?俺が住んでも」

「当たり前じゃない」

「美桜…ありがとな。おばちゃん、ありがとう。じゃあほんと迷惑だったら追い出していいから、よろしくお願いします」

よかった…まだ一緒にいられるんだ!
よかったぁ…
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