さよならの続き
電車の走行音が風に乗って聞こえてくる。
毎日ここで眠っている陽太にしてみれば煩わしいだろうけど、私はこの音が嫌いじゃない。
耳に入って来てすっと抜ける心地よさに目を閉じる。
しばらく私の肩先に頭を預けて息を整えていた陽太が、身体を離して隣に横になった。
彼が腕を伸ばし、私はその懐に入り込む。
甘い余韻が残っている身体はまだ熱い。
「有梨の誕生日、何しようか」
「まだ3か月も先だよ。気が早いよ」
「3か月なんてあっという間だよ。30歳の節目だし、どっか旅行でも行く?」
「そうだね」
私の誕生日は6月18日。
実感がないまま、年々歳を取るのが早くなっていく気がする。
「30代になるのかあ…気持ちは大学生くらいで止まってるんだけどな」
「そんなもんだろ」
「そうかな」
そうだよ、と言った陽太が、腕に力を込めて抱きしめる。
「俺、同じ課にいなくなっちゃうから、ちょっと心配」
「心配?」
「有梨が変な奴にひっかからないか」
「あははっ」
肩を揺らして笑う私を、陽太は少し身体を離して心外そうに見下ろす。
「そんなに大きな異動じゃないでしょ?今までと変わらないメンバーだよ?変な人なんていないよ」
「そうかもしれないけどさ」
見上げる私の顔を隠すように、陽太は私の後ろ頭に触れて、胸にピッタリくっつける。
「…俺は、有梨が桜を好きじゃない理由を知らない」
心が軋む音がした。
毎日ここで眠っている陽太にしてみれば煩わしいだろうけど、私はこの音が嫌いじゃない。
耳に入って来てすっと抜ける心地よさに目を閉じる。
しばらく私の肩先に頭を預けて息を整えていた陽太が、身体を離して隣に横になった。
彼が腕を伸ばし、私はその懐に入り込む。
甘い余韻が残っている身体はまだ熱い。
「有梨の誕生日、何しようか」
「まだ3か月も先だよ。気が早いよ」
「3か月なんてあっという間だよ。30歳の節目だし、どっか旅行でも行く?」
「そうだね」
私の誕生日は6月18日。
実感がないまま、年々歳を取るのが早くなっていく気がする。
「30代になるのかあ…気持ちは大学生くらいで止まってるんだけどな」
「そんなもんだろ」
「そうかな」
そうだよ、と言った陽太が、腕に力を込めて抱きしめる。
「俺、同じ課にいなくなっちゃうから、ちょっと心配」
「心配?」
「有梨が変な奴にひっかからないか」
「あははっ」
肩を揺らして笑う私を、陽太は少し身体を離して心外そうに見下ろす。
「そんなに大きな異動じゃないでしょ?今までと変わらないメンバーだよ?変な人なんていないよ」
「そうかもしれないけどさ」
見上げる私の顔を隠すように、陽太は私の後ろ頭に触れて、胸にピッタリくっつける。
「…俺は、有梨が桜を好きじゃない理由を知らない」
心が軋む音がした。