さよならの続き
どこで何をして、何時間経っていたのかわからない。
日が長い季節なのに、いつの間にか空はもう真っ暗になっていた。
どうやって帰ったのか、気付いたら自分のマンションまでたどり着いていた。
エレベーターを降りると、私の部屋の前にしゃがみ込む人の姿があった。

「陽太…?」
「合鍵、返すの忘れててさ」

陽太は鍵を揺らしながら明るく微笑んだあと、立ち上がって真面目な顔をした。

「西嶋さんから伝言。『どうか幸せに』」

胸の奥底から痛みが湧き上がってきて、涙が浮かんだ。
陽太は知っているんだ。
航平の事情も、今日休んだことも、引っ越してどこかへ行ってしまったことも。
一度溢れた涙は堰を切ったように止まらなくなり、嗚咽を漏らして泣いた。
抱き寄せた陽太が、ずっと背中をさすってくれていた。

6月17日。航平は私の前から姿を消した。

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