死神のマリアージュ

ただの「石」じゃない、「宝」石だよ。

「ここ、フツーのマンションじゃん」
「そうだよ」
「“自宅サロン”ってやつ?」
「ううん。ここは礼子さんたちの“自宅”じゃなくて、礼子さんが石の販売をするために借りてる部屋なんだって。だから・・・個人事務所?それとも個人店舗?」
「要するに、起業家みたいなもんだな」
「たぶんね」
「俺、てっきり礼子さんって人はまだ宝石店のオーナーかと思ってた」
「ご主人が政治家になってから、お店とお店の経営権は他の人に譲ったんだって。今は礼子さん一人でできる範囲で宝石やアクセサリーの仕入れから販売までをここでやってるみたい」
「ふーん」
「顧客も礼子さんが賄える範囲まで留めるために“自分自身で選んでる”って、礼子さん言ってた。だから“一見さん”は基本、お断りスタイルで、ホントにここは“知る人ぞ知る”名宝石店なんだよ」と私は言いながら、インターホンを押した。

「てことは、雅希も礼子さんに“選ばれた”客の一人になるんだな」
「うん。私は・・」と言いかけたところでドアが開いた。
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