こんな私でもキュンしたい
 3月14日、火曜日。

 私、佐倉志保(さくらしほ)はいつもと同じ時間に登校した。いたって変わらない日常。
 教室に着くと、唯一の友達である同じクラスの井上真梨香(いのうえまりか)ちゃんが駆け寄ってきた。

「おはよう! 志保」

「お、おはよう……真梨香ちゃん」

 真梨香ちゃんはいつも元気だ。明るい笑顔で、皆を和ませてくれる、クラスの女子の中でもムードメーカー的な存在の女の子。そんな真梨香ちゃんが私の友達だなんて、少し恐れ多い気もしていて、本人についそう言ってしまったことがある。
 その時、真梨香ちゃんにこう言われた。

「誰が誰と友達になろうが、周りには関係なくない? 私が佐倉さんと友達になりたいから、話しかけたんだよ。ただそれだけ」

 今思えば、最初は「佐倉さん」呼びだったっけ。
 今では「志保」って呼び捨てで呼んでくれていて、なんだか友達の中でも少し昇格したような……そんな気持ちになったのを覚えている。友達に昇格も降格もないとは思うけど。

 私個人的には、距離がさらに近づいた気がして嬉しかった。
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