約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「お、お祖母ちゃん?」

 前髪が垂れ目元を隠してしまうので、どんな顔でこんな真似したかは定かじゃない。けれど少なくとも、あれはわたしが知るお祖母ちゃんではないはずだ。

 2本目を抜くとお祖母ちゃんみたいな何かが身体を左右に揺らし、近付いてきた。
 足に力が戻らないわたしはお尻を擦って後退する。

 じりじり、確実に距離は縮まる。

「ーーもしもし? おい? 何か用か?」

 お母さんに掛けたつもりが、手元がくるって涼くんに繋がったらしい。大声で助けを呼びたいが、声が喉に張り付いて出てこない。

「おい! いい加減にしろよ! こっちは忙しいんだよ」

 涼くんの痺れを切らす言葉にお祖母ちゃんの形をした何かが顔を上げた。

「ひっーー」

 その真っ赤に充血した目で睨まれると、ぶわぁと声量のボリュームが振り切れる。

「涼くん助けて! お、鬼がいる! 助けて、涼くん!」

 わたしはあれを鬼と蔑み、鬼は悲鳴を浴びると四つん這いとなって飛び掛かってきそうな威嚇をした。

 鬼に喉を狙われている。察知して鞄を抱えたものの、刃物相手じゃ防ぎきれないだろう。

「桜子? どうした桜子! 今、家に居るのか? すぐ行く、待ってろ!」
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