約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
「あまり甘やかさないで下さい。癖になると困ります」

「むしろ癖になってくれないと困る。ほら、ベッドに入って」

「……美雪さんに連絡するんですか? わたしを覚えているか確認したりしますよね?」

 自分の目で現状を確かめる勇気がないくせ、疑り深い。すぐ四鬼さんを試す物言いをしてしまう。

「しないよ、柊に頼むつもり。僕から連絡したら期待させちゃうだろ? どうすれば桜子ちゃんに信頼して貰えるかな? 浮気はしない、他の女性に目移りなんてあり得ないと証明したい」

 立ち上がり、四鬼さんを見る。四鬼さんは本当に優しい、優し過ぎる。一方、わたしは彼の想いを全然返せていないじゃないか。

 万歳して喜ばないまでも、涼くんがわたしを忘れていなければいいなって心の何処で願ってしまう。涼くんを鬼にしたくなければ、いっそ忘れられた方が都合がいいのに。

 四鬼さんはそういうのを含め、丸ごとのわたしを包み込む。鬼姫だから、浅見桜子だからという次元じゃない。

「わたしこそ、四鬼さんにどうすればいいんでしょう?」

「僕の側に居てくれればいい。他は何もいらない」

「それじゃ何も返せてないです。第一、今のわたしは何処にも行きようがないし、帰る場所なんてありません!」

「なら、ひとついいかな?」

 痺れを切らした四鬼さんにベッドの前まで手を引かれる。

「なんですか?」

「いつか、いつかでいい。君の中でいいと思えたなら僕の血を飲んで。それで桜子ちゃんの血を飲ませてくれない?」

「ーーそれって」

「知ってるよね? 鬼姫に対してのプロポーズ。結婚しよう、桜子ちゃん」
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