約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される
 脳裏に四鬼さんが寂しそうな顔が過った。でも、涼くんと居たい。鬼と人の恋路が険しいものであっても涼くんとなら歩みたい。一緒に居たい。

「好きだよって病室でも言ったんだ」 

 繰り返すと泣きたくなる。

「知ってる。聞こえてたし、キスされたのも分かってる」

「! 起きてたの?」

「意識はあったな。てか、お前とは何度もキスしてる。お前が忘れているだけだぞ」

「えぇ!」

 病室のキスと先程のキス以外、全く覚えがないものの、なんとなくだが感触を知っていた気がしないでもない。

「でも四鬼さんとした時もーー」

 初めてのキスとは感じられなかった。

「は? 四鬼千秋の名前がなんで出てくるんだ?」

「え、あっ、それは、その」

「四鬼千秋とキスしたのか? 血を飲んだのか?」

「血は飲んでないけど……」

「はぁ、キスはしたんだな」

 頷くと袖口で口元を拭われる。
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