約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

レモンのはちみつ漬け

「おい、こんな所で何やってんだ?」

 ジャージ姿の涼くんが半開きのドアへ寄り掛かり、不機嫌に吐き捨てる 。

「部活終わったの? 携帯を鳴らすってーー」

 しまったもう約束の時間か、携帯を確認したが、着信はなかった。

「カウンセリングなんか必要ないだろ。お前はどこもおかしくねぇ」

 ズカズカ踏み込みんできて、わたしの腕を引き上げる。

「っ、痛い、痛いって! すぐ用意するから待って」

「早くしろ」

 低く催促されて言い返せなくなる。もたつくわたしは舌打ちを浴びせられ、腰を無理やり浮かされた。
 すると、もう1本の腕が介入してくる。

「女の子に手荒な真似はやめて下さい」

 先生は静かに、けれど力を込め涼くんを剥がす。

「あんたがイケメンカウンセラー?」

「イケメンかどうかは知りませんが、カウンセラーの柊です。鬼月学園で保健医をしております。君が夏目涼君ですか?」

「あっそ。診て分かっただろうけど、こいつは問題ねぇから」

 涼くんは無視して名乗らない。

「問題がないとは?」

「元気だって言ってるの。こいつにもう関わるな」

 初対面かつ目上の人に好戦的な喋り方を見過ごせず、袖をつつく。

「先生に失礼だよ。先生は校長先生とかに頼まれて話を聞いてくれたのーーその、昨日の件で」
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