約束された結婚ーー鬼の花嫁は初恋相手と運命の相手に求婚される

 浅見桜子ちゃんは僕の花嫁なんだよーー四鬼さんの突拍子もない言葉にあんぐり、開いた口が塞がらない。

「だって学園の生徒で年上なら僕も該当するでしょ?」

 小声でウィンクを付け足されるも、いや、まぁそうだけど、どもってしまい、ぱっちり二重の下にある涙ボクロを見詰めた。

「えぇ嘘ー! 四鬼様の花嫁ってなんなの!」

 私より先に金縛りが解けた子等から絶叫に近い非難が生まれ、四鬼さんは唇へ人差し指を立てた。その形の良い口元に意識を吸い込まれる。

「おしゃべりな小鳥は大好きだけど、桜子ちゃんを悪く言う小鳥は好きじゃないなぁ」

 嫌いと言わず好きじゃないとの言い回しは計算していそうだ。四鬼さんは強い言葉をあえて使わない。
 はわたしの肩を抱いたまま、柔らかな牽制をする。

「桜子ちゃんをいじめたりしたら怒っちゃうかも。僕、怒ると怖いんだよ?」

 言葉に聞き入ってみんなは沈黙する。ただひとり、涼くんが面倒そうに言い返した。

「はぁ、御曹司とケンカしたい奴なんかいねぇよ。てか、親の権威を振りかざしてダセェ。好きな女ならテメェの力で守れっつーの」

「ダサい? この僕が?」

「ダサいだろ。他に誰がいるんだ? おい、帰るぞ」
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