声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 急に視界がぐらりと揺れて驚く私。
 気づくと顔の近くにお兄さまの顔も近くにあって、吐息を耳元に届きます。

「お兄さま、これじゃあ本がとれません」
「本なんてどうでもいい」
「意外と甘えん坊だったんですね」
「甘える男は嫌いか?」
「いいえ」

 私とお兄さまはお互いに向かい合って、私はそのままお兄さまに抱きしめられました。

「お姫様、私と婚約してくださいませんか?」
「私でいいのですか?」
「君がいい」

 私はお兄さまの瞳を見つめて言いました。

「はいっ! 私と婚約してくださいませ、お兄さまっ!」


 私の唇にそっと温かい唇が触れました──
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