声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「ぐう~」

 はあ……。
 また空腹でお腹が鳴ってしまいますが、いつものことなので水でしのぐことにします。
 ああ、やっぱりここのお水は美味しいですね。
 私はベッドに横になると、そのまま疲れに負けるようにゆっくりと目を閉じました──


 次に私が気づいた時は明け方のような薄暗い感じの景色で、部屋のドアのほうを見ると、扉の隙間から何か明るい光が見えています。
 何か変だなと思ってベッドから降りて扉をあけました。

「──っ!!!!」

 目の前一面に炎が広がっていて、階段や隣の部屋のほうにも炎があり、私はどうしていいかわからなくなって足がすくんでへたり込んでしまいました。

「ど、どうしよう」

 火事だと気づいたのはその少し後で、シスターや他の子たちを呼んでも誰からも返事がありません。
 そして、私の記憶はここでぷつりと途切れました。



◇◆◇


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