声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
「──っ!」
「きゃっ!」

 私は何かにぶつかってしまったようで頭をなでなでします。

「まあ、申し訳ございません! 私の不注意でっ! お怪我はございませんか?」
「(こくこく)」

 私は目の前のメイドさんに慌てて頷いて答えます。
 そうするとメイドさんは安心したように胸に手をあてて、はあ~と息を吐きました。

「もう起きていらっしゃったのですね。どうかなさいましたか?」

 言葉で思わず答えようとしますが、もちろん声は出ません。
 ごめんなさいの意味もこめて何度かお辞儀をしたあと、ほうきを探しているということを伝えたくて、ほうきを掃く様子をやってみます。

「ん?」

 何度かほうきの形を手で作って、そのあと掃く動作をしてみるのですがやはり伝わりません。
 では、これはどうでしょうか。
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