声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 パンをスープに浸して食べて、サラダはフォークでさして食べます。
 でも食事の真ん中くらいにくる少し大きなお皿にのったお肉やお魚の食べ方は、今でもよくわかりません。
 あまりじっと見つめるのも失礼かと思って、盗み見るようにちょっとだけラルスさまの食べる様子を見ています。

 とても上品に食べていらっしゃって、でも同じように真似をするのにうまくできないのです。

「──っ!!」

 また昨日みたいにお魚にかかっているソースをこぼしてしまい、クリスタさんが布でふき取ってくれます。
 服に飛んでしまってお洗濯ものを増やしてしまう申し訳なさで、心が痛いです。

「お気になさらないでくださいね。たくさん食べてください。おかわりもありますから!」

 クリスタさんは私の思いに気づいてくださったのか、とても優しい言葉をかけてくださいます。
 でも、私、もうお腹いっぱいです……。

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