声を失った令嬢は、次期公爵の義理のお兄さまに恋をしました
 お兄さまに教わった読み書きの成果もあって、大方の文字が書けるようになり、質問などがあるときはこうして文字に起こして書いて伝えます。
 お父さまやお兄さま、クリスタさんは筆記がなくてもある程度意思疎通できるようになりましたが、初対面の方には筆記があると便利です。
 お医者さまに定期的に診察していただくのですが、まだ声は出ないようです……。

「ローゼ」

 その声に振り向くとそこにはお仕事を終えたであろうお兄さまがいらっしゃって、その手には何か包みのようなものを持っていらっしゃいます。

「今日は天気がいいから外で勉強しようか。クリスタにサンドウィッチを作ってもらったんだ」
「(サンドウィッチっ!! はいっ!)」
「たく、勉強がメインがサンドウィッチが楽しみなだけかわからないな」
「(どちらも楽しみですっ!)」

 身振り手振りもつけながら会話をすると、外の大きな木のある庭に行きました。

 いつもの庭園とは違い、ここは特にテーブルや椅子はないので木陰に座って木にもたれかかりながら腰かけます。
 ドレスが汚れるなんて最初は迷っていたんですが、何度かするうちに慣れてしまって、クリスタさんにも「洗濯は私がしますからどうぞご遠慮なさらず!」と言われています。
 少し気温も高くなってきていたので、木陰は涼しくて気持ちいいですね。
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